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第142話 視える者
翔には視えていた
飛鳥井に関わりのある者の先が……視えていた
かぁちゃは選別して、視なきゃいけないモノを視ろ!
と怒る
集中して視ろ!
と怒る
時には殴られる
血を出し……倒れると……
兄弟が助けに来ようとする
だが……康太がそれ止める
「翔は視なけれはならぬ使命がある
お前達に恨まれようとも……な
オレは翔に修業をさせねはならねぇんだ!」
康太は言い捨て、翔だけ特別に厳しく修業をさせる
翔は自分が真贋だと言う自覚がある
視る者の使命だと言う自覚もある
瑛太や清隆が何時も翔が泣いてると……
「康太はもっと厳しい修業をして来たのですよ」と慰めるから……
知っている
飛鳥井康太……かぁちゃの偉大な功績は……
言われなくても……視えているから……
「何度言えば解るんだ!」
康太は翔の頬を叩いた
「注意力散漫過ぎる!
実践なれば必ずお前は死んでいたぞ!」
そう言い殴り飛ばされる
翔の体が……衝撃で吹っ飛んで……
壁に叩きつけられる
唇の端から……鮮血が流れて……
それでも翔は立ち上がった
「ぎょめんなちゃい!」
謝り、修業を再開させる
一生や聡一郎、隼人や慎一はそれを見ていて……
止める事も出来ずにいた……
次代の真贋を育てるのは現真贋なのは飛鳥井のしきたりなのだから……
「何故殴られたか解るか?」
「かけゆ……ちゅうちゅう……ちてにゃきゃった…」
「そうだ!少しの油断が命取りになる!
オレはお前に命の守り方を教えてる!
解るな?翔?」
「あい!わきゃりまちゅ」
「ならば歯を食いしばれ!」
「あい!」
翔は目を瞑り……拳を握り締めた
康太は翔を殴り飛ばした
「今日は終わり!」
康太はそう言うと背を向け、道場を出て行った
榊原は翔を立ち上がらせて……怪我の手当てをした
「痛いですか?」
「らいじょうび……」
泣かずに……翔は堪えていた
「かぁちゃは……」
お前のために……厳しいんだよ?
とは言えなかった……
榊原は言葉を探す
「らいじょうび……わかっちぇる」
翔はそう言い……
逆に榊原を癒す
「とぅちゃ……いちゃいにょ?」
涙を流してると……翔が涙を拭った
「………翔……母さんは厳しい鬼ですが……」
「ちゅべちぇ……かけゆのためなにゃの!」
榊原は翔を抱き締めて泣いた
他の兄弟は……涙を堪えて……堪えていた
道場を出て行った康太を一生が追った
「………康太……」
一生がそっと抱き締めると……
「………本当なら……殴りたくなんかねぇ……」
「解ってんよ……」
一生は康太の背を撫でた
「……視えねぇ真贋なんて飛鳥井には必要がねぇ……
真贋がいねぇ飛鳥井は……終わったも同然……
それはやっちゃぁいけねぇ事なんだ…」
「……翔は解ってる……」
「………子ども達に恨まれても……
貫かねぇとな……」
「誰も…おめぇを恨んだりなんてしねぇよ!」
康太は……泣いてはいなかった……
「かぁちゃ!」
翔が康太を追ってやって来た
康太は振り返った
「ぎょめん……かけゆ……もっちょ…ぎゃんびゃる!」
「翔……」
康太は翔の前に立つと屈んだ
膝をついて翔と同じ目線になる
「翔…視えねぇ真贋なんていらねぇんだよ…
オレが死んだら……おめぇが総てを背負わねぇとならねぇんだ……」
「……かぁちゃ……ちにゃにゃいで……」
「まだ死なねぇよ……
おめぇを飛鳥井家真贋とお披露目する日までは……逝けねぇ……」
「かぁちゃ……かけゆ……かぁちゃにょきょらよ!」
「当たり前じゃねぇかよ!」
康太は強く翔を抱き締めた
「翔、修業の後は飯だぜ!」
「かけゆ……ポンポンちぇった!」
「食おうぜ翔!」
康太は康太を抱き上げて家へと向かった
榊原はそれを優しく見守り……後ろを歩いた
一生や聡一郎、隼人に慎一は子ども達を連れて家へと向かった
帰ろう……
家族の待つ家へ
どんなに辛くても
どんなに哀しくても
家族のいる家に還ろう……
翔は後ろを振り返った
すると流生や太陽と大空が翔に駆け寄った
何も言わなくても大丈夫
ずっと一緒にいるから……
ずっと
ずっと
ずーっと一緒にいるから
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