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第143話 微睡みの朝

愛し合って目醒める朝 恋人は腕の中で……… 「あれ?……またいねぇ……」 一生は恋人を抱き締めようとして、虚無感に辺りを見渡した 恋人は……早起きだ ただ、早起きなんじゃねぇ…… 寝起きと共にヒゲを気にして洗面所へ走る ヒゲ……別に俺は構わねぇのに…… 男だもんなヒゲは生えるさ ヒゲの生えねぇ男なんて……飛鳥井康太位なもんだ 康太はヒゲが生えねぇ…… スネ毛もねぇ足はツルツルだ 色素も体毛も薄い康太は……脇毛もない…… 当然……恥毛も……少ない…… 本人は凄い気にしている 力哉はそんな康太が羨ましがってる 康太にしたらモッサーと欲しいだろうに…… 世の中は……矛盾ばかりだ 旦那は康太にヒゲがあろうが、なかろうが 外身を愛してるじゃないから、構わないだろう 俺も外身だけじゃねぇから…… 構わないのに…… ダラダラとベッドの上で愛し合っていたい…… 康太と旦那程に甘くなくて良い 恋人同士の微睡み位は欲しいと想う……一生だった 康太は応接間で榊原に甘えていた その日は休日で力哉も応接間にいた 「なぁ伊織、オレさ、モッサーと脇毛もスネ毛も……あそこの毛も欲しい訳よ 勿論 朝なんてヒゲでジョリジョリだぜ!って目醒めてぇ訳よ! 伊織は嫌か?そんなオレ、嫌か?」 榊原は康太を膝の上に乗せて 「僕は君ならモッサーでもツルツルでも 何でも構いません ジョリジョリヒゲの康太ですか……見てみたいですね! ワイルドでモテちゃいますよね? 心配です…… ツルツルの君も……モテるのに…… これ以上モテないで下さい……」 榊原はツルツルの康太の顔にスリスリした 「……オレ……水泳の授業……何時も虐められて来た……」 康太の言葉に力哉はギョッとなった 「水泳の授業になると皆、スネ毛モッサーでむさ苦しい…… お前……その年でツルツルかよ……って何時も虐められた……」 康太が言うと聡一郎も 「でしたね……皆して触ろうとして……逃げ回ってましたもんね」 「ツルツルな体躯が嫌いだった!」 康太はフンフンと鼻息も荒く力説していた 「康太……無い物ねだりは止めなさい…… 僕はどんな君でも愛しています」 「ほんと?」 「本当です! 僕は君の魂さえあれば3センチでも構わないと言ったじゃないですか」 「そうだったな お椀のお風呂は気持ち良かったな 伊織が絶妙な洗い方してくれるから気持ちえかったな」 「僕は君がいてくれさえすれば…… どんな姿でも構いません 一生、君もそうでしょう? 力哉がいてくれれば…どんな姿でも構わないんでしょ?」 「……え?旦那……何言ってる?」 「君は違うのですか?」 「違わねぇよ! 力哉が力哉なら、俺はなんだって構わねぇよ! だからさ、お前、朝はダラダラとベッドの上にいろよ! 康太からしたから……力哉の悩みは羨ましいもんなんだせ? 康太はまぢでモッサーに憧れてるんだからな 旦那は康太がモッサーだろうがツルツルだろうが構わねぇんだよ 俺も構わねぇよ! お前が横で寝ててくれれば……それだけで良い」 「……一生……」 力哉は涙ぐんで一生を見た 聡一郎が一生を立たせると、力哉も立たせて 「ラブシーンは部屋でやりなさい! 康太と伊織で応接間は手一杯ですからね!」 と言い、無理矢理応接間から放り出した 放り出された一生と力哉は、一生の部屋へと向かった 聡一郎は「本当に不器用な……」とボヤいた 康太は笑って 「言ってやるな お前も不器用な仲間入りじゃねぇかよ?」と揶揄した 「……康太……僕は不器用な奴ですが…… 悠太を失う恐怖を抱いた日から…… 悠太に対しては素直であろうと心掛けてます」 「何があっても……互いを離すな……」 「離しません!」 聡一郎は答えた 「悠太は?」 「俺も聡一郎君を離さないよ 何があろうとも……それは変わらないよ」 「今の言葉を忘れるなよ? お前達の……想いを覆す日が来ても…… 今言った言葉は絶対に……違えるなよ」 康太は果てを見て…… 辛そうに言った この数ヶ月後 聡一郎は……暴行の限りを尽くされ…… 瀕死の重傷となった

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