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第148話 尻尾のリボン

桃太郎が兵藤の家で遠吠えしていた 上を向いて悲しそうにワォォォォンワンワン… と鳴いていた 美緒は息子に「……桃は何が言いたいのじゃ…」と尋ねた すると兵藤は「俺は康太じゃねぇから解らねぇってば!」と文句をたれた 美緒は応接間を出て行った 暫くすると美緒は何と……康太と伴侶の榊原を連れて帰ってきた 康太は桃太郎の前に座ると桃太郎に話しかけた 「桃、どうしたよ?」 桃太郎は康太を見るとワンワン…ワンワワワン…と必死に訴えた 康太は「ふんふん」「そうか…」「うし解った!」と桃太郎と話していた そして美緒を見ると 「飛鳥井に来るか? それとも一生を呼ぶか?」 「………それを解決出来るのは一生なのかえ?」 「だろ?桃」康太が言うと桃太郎が『ワン!』と答えた 「……飛鳥井に行くのは……失礼でないか?」 美緒が躊躇していると榊原が 「美緒さん、飛鳥井は何時でも大歓迎です」 と言い笑った 美緒はその顔に……ポッとなった 流石康太……めちゃくそイケメンではないか! 榊 清四朗を若くしたような顔にときめく 「では、飛鳥井に行こうとしようぞ!」 美緒が言うと榊原は桃太郎を抱っこした 桃太郎は榊原の顔を舐めてスリスリした 康太がピキッとなると……兵藤は慌てて、榊原の腕から桃康太を取り上げて抱っこした 榊原が笑って康太を引き寄せた 飛鳥井の家に行くと、一生が応接間にいた 「ほれ、桃行ってこい」 康太が言うと桃太郎は一生目掛けて飛んでいった 『一生  一生  逢いたかったよ』 思いを込めて桃太郎は一生を舐めた 一生は笑って桃太郎のしっぽのリボンを外した そしてブルーの綺麗な色のリボンを結んでやった 「ほら、これで良いか?」 『一生 一生 それだよ!ありがとう』 桃太郎は嬉しそうに一生を舐めた 一生は熱烈歓迎なペロペロに 「桃、止めろ…もう良いってば…」と桃太郎を撫でた 美緒は玲香と飲み始めた 真矢も呼ぼうと連絡して集まり始めると…… 幾つになっても女子トークに花が咲く 兵藤は……康太の横に座った 「貴史、Xmasプレゼント見せろよ」 「……っ!嫌だ!絶対に見せねぇ!」 「ならおめぇの部屋に行くぞ?」 「……遊びに来る気かよ?」 「おめぇの寝室の方に遊びに」 「……止め……それは止めようよ……」 「おめぇの部屋は二つあるもんな 寝室にしてる方の部屋に遊びに行ってやんよ」 「………康太……いじめるな……」 「なら止めとく」 「あ、小箱のお礼もしてねぇしな」 Xmasの日に兵藤は康太に小箱を渡していた そのお返しの事を言っていた 「要らねぇよ……」 「んな事は言うな!」 「だから俺の部屋に来るんじゃねぇ!」 「Xmasプレゼント教えてくれねぇからじゃねぇかよ……」 「……俺……お前の子供……怖いわ」 「そうか?桃太郎よりはマシだろ?」 定期入れを咥えている犬を見て……兵藤は…… 「んとに……コイツも怖いわ……」 新しくなったリボンのしっぽをフリフリふって桃太郎は嬉しそうだった 一生は桃太郎の口に咥えた定期入れを取ると兵藤に渡した 「桃、人には解っちゃならねぇ事があんだぞ? 貴史のプライベートだからな見逃してやれ」 言われて桃太郎は ワンワン『うん!解った!』と返事した 「うしうし!良い子だ」 兵藤は「一生って犬の言葉解るのかよ?」と問い掛けた 一生に変わって康太が 「一生は昔から動物の言葉が解るんだよ」と答えた 兵藤はギョッとした顔をした 康太は兵藤の耳元で 「当たり前やん 万物の愛を司る神なんだからな」と囁いた 兵藤は平等の愛を司る神だったな……と思った 「俺は……動物の言葉は解らねぇ……」 兵藤は拗ねた すると聡一郎が隣に座って 「僕は何も解りません! なので気にする必要ないです 赤いのは野生児なんで同類だと想ってるんですよ」 とボソッとボヤいた 一生は聡一郎をゲンコツで殴り 「んな子に育てた覚えはありませんよ!」 と怒った 「父さん、お年玉は車で良いです」 「俺はパトロンかよ」 「僕に貢いで下さいね」 「俺より稼いでるのに……」 聡一郎は一生を抱き締めた 「聡一郎」 康太がふと思いついて聡一郎を呼んだ 「何ですか?」 「お前、貴史に何やったんだよ?」 康太が言うと兵藤はギョッとした 聡一郎はふふふ…と笑い 「内緒です!」と答えた 康太は聡一郎をグリグリした 聡一郎は笑ってグリグリされていた 榊原が康太を抱き上げると膝の上に乗せた 「貴史!飲もうぜ!」 康太は兵藤の首に腕を回して懐いた 兵藤は嬉しそうな顔で笑っていた 仲間で騒いで飲んで…… 兵藤は幸せそうに笑っていた 美緒はそんな息子を目にして……目頭を押さえた 玲香は美緒の肩を優しく抱き締めた そして飛鳥井の夜は更けていった ワンワン! ワワン!ワンワン 『おっぽのリボン 新しいのになったんだよ!』

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