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第150話 兄弟
飛鳥井の家の応接間のソファーに座って兄弟はニコニコとご機嫌だった
生まれて初めて……
兄弟が別々に過ごす時間を送った
その時の……悲しさは……
癇癪を起こして地団駄踏んで泣き出しても収まらない………程に……悲しかった
何故?
何故……
何故……おとたんはいないの?
何時も一緒だったのに……
おとたん!
泣いて叫んでも……
音弥は現れない
足の手術受けてリハビリしなきゃならないんだよ
だから音弥は家にはいられないんだよ……
とぅちゃとかぁちゃは……そう言った
音弥は普段からフラフラしてたから……
それが病気だなんて気付かなかった……
ねぇおとたん
あのにぇ、おとたん……
兄弟は音弥の名を呼んで……
いない現実に打ちのめされていた
その音弥が帰って来たのだ
兄弟は「おとたん」と名前を呼んで確かめた
音弥はコオとイオリを撫でに行って……
一匹増えた現実に泣いた
あずきは……困って……キュンキュン鳴いた
コオがあずきを舐めて……
音弥に『あずきって言うんだよ』とワンワンと吠えていた
流生も『あじゅき』と教えた
あずきは子ども達が大好きだった
子ども達もあずきが大好きだった
音弥は「あじゅき?」と問い掛けた
太陽と大空は「「ちょうらよ」」と音弥に抱き着いていた
「あじゅき おとたんらよ」
音弥はあずきを撫でながら自己紹介した
あずきは音弥をペロペロ舐めた
そこへ兵藤が遊びに来た
応接間に入って音弥を見付けて兵藤は声をかけた
「お!音弥、帰って来たのかよ?」
「ひょーろーきゅん!」
音弥は兵藤に抱き着いた
「クリスマスプレゼントありがとうな
俺の車に飾ったぜ」
兵藤が言うと音弥は瞳を輝かせて
「みちゃい!」と訴えた
兵藤は「うし!なら見に行くか?」と音弥を抱き上げた
その足下に……翔も引っ付いた
「かけゆも!」
翔が言うと流生も「りゅーちゃも」と言いだして
太陽と大空も「「みちゃい!」」と兵藤にねだった
兵藤は一生を見た
「一生、連れてきてくれねぇか?」
「お!良いぞ!」
一生は立ち上がった
慎一も立ち上がると……3人で5人の子供を連れて応接間を出て行った
康太は榊原の膝の上に乗って榊原に抱き着いた
「どうしたんですか?奥さん」
「愛するダーリンに抱き着いただけだ」
康太は笑っていた
悠太はいたたまれなくなり……聡一郎と共に……
応接間を後にした
「伊織…」
「何ですか?」
「…………何でもねぇ……」
そう言い康太は榊原の胸に顔を埋めた
「僕の奥さんはこの世で一人しかいません
僕は君しか愛しません……」
「オレも伊織しか愛さねぇ……
青龍だけ愛してる……」
「嬉しいです」
榊原は嬉しそうに笑った
暫くすると応接間に一生達が戻って来た
慎一と兵藤で子ども達を応接間へと入れた
康太は榊原の膝の上に乗って目を瞑っていた
「康太…寝てるのかよ?」
一生は榊原に問い掛けた
「どうですかね?」
榊原は笑っていた
音弥はソファーをよじ登り榊原の所まで行った
「とぅちゃ ひょーろーきゅんのきゅるま
くまちゃ かじゃってあっちゃの」
「良かったです」
榊原は音弥を撫でた
音弥は榊原に抱き着いて、眠そうだった
「とぅちゃ らいちゅき」
音弥はニコッと笑って榊原に伝えた
「とぅちゃも音弥が大好きですよ」
「とぅちゃ…」
音弥は甘えた
子ども達は全員ソファーによじ登り康太や榊原に抱き着いた
流生も「りゅーちゃ とぅちゃ らいちゅき」と言って笑った
翔も「とぅちゃ かけゆもらいちゅき」と伝えた
太陽と大空は「「らいちゅきらよ!」」と訴えた
榊原は子ども達を抱き締めた
「僕と奥さんとの宝物です」
そう言い優しく笑っていた
スースー寝息を立てる康太に抱き着いて、子ども達も眠りに落ちた
ソファーの上から眠りに落ちた子供をソファーに寝かしてブランケットをかけた
一生は笑ってその光景を見ていた
榊原は「音弥の熊、飾ってありましたか?」と一生に問い掛けた
「飾ってあった
子ども達が貴史の部屋が見てぇって……
結構大変な事になったな」と事情を話した
榊原は何も言わす笑っていた
「慎一、制服、出来上がりましたか?」
「来週には受け取れます」
「4月までに…揃えるモノがありますからね……」
「追々、やっていきます」
「………康太の子ですからね……
スカートめくりしないか……不安です」
榊原が言うと慎一は爆笑した
「美代子先生のスカートめくりまくりましたからね
めくった後に、美代子今日も綺麗だとか言うんですから……康太は何時も怒られないのですよ」
思い出して笑って話した
一生も「悪ガキだったからな……」とボヤいた
兵藤は「俺が一番の被害者だ!」とボヤいた
一生は「そうそう!何時もお前は怒られるんだよな!」と爆笑して
慎一は「康太は逃げ足は早いので…この子達も大丈夫だと想います」と笑った
想いは尽きない
5人兄弟が揃った日だった
この先も離れる日事のない兄弟だった
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