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第151話 桜林OB

応接間でテレビを見ている時 薄幸の美少年……と言うフレーズに康太はニカッと笑った 「薄幸の美少年かぁ……それオレやん」 一番似合わなさそうな奴が…… そんな台詞を吐いた 一生は「発光の美少年?」と呟いた 聡一郎は「発酵の美少年?」と思案した 康太は怒りマークを額に貼り付けて…… 「おい……その漢字は何だよ?」と怒った 一生は「発する光り……」と小声で言い 聡一郎は「麹の発酵……とかの発酵…」と呟いた 康太は「オレの言ってる薄幸は幸せが薄い……の薄幸だかんな……」 「………薄幸の……美少年は……おめぇには合わねぇよ」 一生はボヤいた 「そうか?美少年……だと……尾上先輩は拝んでたけどな……」 康太が言うと一生はため息を吐いた 「………よりによって尾上かよ……」 嫌そうな顔をした 聡一郎は「……出来るなら尾上と西田の名前は永久に聞きたくない……」と吐き捨てた 「………西田は知らねぇけど、尾上先輩はこの前逢ったぜ?」 一生と聡一郎の顔がピキッと固まった 「………あのクソ野郎……」 「……やはり殺っておくべきでしたね…」 一生と聡一郎は呟いた 「尾上先輩、結婚したんだってな」 聡一郎は嗤って 「へぇ……誰と結婚したと言うんですか?」 「扶桑の一族の娘と結婚したって連絡があった 扶桑の一族は飛鳥井とは切っても切れねぇ繋がりがあるかんな……」 聡一郎は奥歯をギリギリ噛み締めて…… 「絶対に扶桑に一人で行っちゃダメだからね!」 と康太に言った 榊原は一生に 「………康太と何かあったのですか?」と問い掛けた 一生は榊原に…… 「………康太を拉致って……閉じ込めようとした経緯があるんだよ…… 愛するが故だと……強行にでやがった………」 一生は悔しそうに……吐き捨てた 「何が愛だ! 閉じ込めて……人形にするつもりだった! 西田と尾上は死んでも許したりはしない!」 聡一郎も悔しそうに吐き捨てた 榊原は「それは何時の頃の話ですか?」と問い質した 「高等部1年の時の話だ 康太には熱狂的な信奉者が存在するんだ そいつ等は……康太だけを愛して過ごしてる」 一生は榊原に説明してやった 「康太の真贋……が欲しいのですか?」 「………それなら……解りやすいが…… そいつ等は康太そのものを愛でて楽しむ輩なのです 康太を愛でて楽しむ……穢れるのに……」 聡一郎は許さない!と憎しみを込めて……吐き捨てた 「………拉致られた事が……あるのですか?」 「何度もな!」 一生の言葉に榊原は顔色をなくした 「だから瑛太さんが迎えに来ていたのです」 聡一郎は瑛太が何故あそこまで送迎していたのかを教えた 「………康太が欲しいのですか? その人達は………」 「康太自身が欲しいと世迷い言を言う輩は多い だから俺は言ったやんか…… 康太はモテるぞって……嘘じゃねぇんだよ」 「………僕だけの康太なのに……」 榊原は康太を抱きしめて……呟いた 「………尾上は結婚した位でおめぇを諦めるとは想わねぇな…」 一生は胸糞悪そうに吐き捨てた 「………扶桑の一族は甘くはねぇ…… もうオレに手は出せねぇよ」 聡一郎は思案して 「扶桑……一族とよりによって結婚しましたね 見聞の扶桑……飛鳥井の黄泉の眼同様に地獄耳を閻魔に渡された一族でしたね」 と扶桑一族の事を口にした 「そう、だからなもう悪さは出来ねぇだろ? だけど……変わらず尾上先輩……君が欲しい…だの、触りたい……だの未だに言ってた オレは幾つになっても美少年だとか言うからな…… 笑っちまったぜ 薄幸の美少年だって……今も言ってんぜ」 「………お前、尾上に逢ったのかよ?」 「扶桑一族の挨拶を受けたかんな その時に尾上がいて、オレを口説いていた アイツの瞳にはオレは幾つになっても美少年らしいぜ?」 「………目医者に行く様に扶桑小里(扶桑家当主)に言っておきましょう!」 聡一郎は皮肉にそう捨てた 「飛鳥井のOB会にはやっぱ行きたくねぇな まだまだ危ねぇ奴がいるかんな……」 榊原は康太を抱き締めて 「出なくて良いです! 君を拉致るなら……生かしてはおきません! 僕から君を奪おうとする者など許しておきません!」 「なら伊織、OB会は出ないって貴史に言っておいてくれ」 「解りました 後で言っておきます」 榊原が言うと一生が 「………もしかして……OB会断らせる為に尾上の話をしたのか?」 と疑って掛かった 「尾上がなオレにOB会には出るなと言ったんだ」 「……え?何で尾上が?」 「何でも忌埜正宗が……オレに逢う日を待つ待てるんだと……」 一生と聡一郎は息を飲んだ そして……青褪めた…… 榊原は一生に「忌埜正宗って誰ですか?」と尋ねた だが一生は青褪めた顔して……何も言わなかった そして榊原に 「貴史には俺が言っといてやる……」 と携帯を取り出した 聡一郎は榊原の耳元で…… 「忌埜正宗……日本経済を裏で操ってる黒幕、忌埜宗近の一人息子……です」 「桜林の出なのですか?」 「彼は学習院に在籍していたのに康太に一目惚れして桜林に来たという…伝説があります 自分の教室に行かずに康太の隣の席に座って卒業した……と言う変な人です 年の頃なら29になりますかね?」 と聡一郎は説明した 榊原は言葉もなかった 「まぁ、忌埜正宗にも近いうちに絡まねぇとならねぇ時が来たって事だ 時が来たから……オレの周りに……姿を現し始めたと言う事だ…… 無関係じゃねぇって事だ……」 「………君を誰にも盗られたくないです……」 榊原は不安そうな瞳を康太に向けた そこへ一生からラインを入れられた兵藤が飛鳥井を訪ねてきた 「OB会出ねぇって何かあったのかよ?」 兵藤は単刀直入に問い掛けた それに康太が答えてやった 「忌埜正宗がオレに逢いてぇって手ぐすね引いてるって話をしたんだよ そしたらOB会は出なくて良いって言ったからな連絡入れさせた」 兵藤も忌埜正宗の名を聞いて……顔色を変えた 「………諦めていないのか? 飛鳥井家真贋は伴侶を得たと各方面に知らしめたんじゃねぇのかよ?」 「瑛兄が国内外に電文を打って発表した筈だぜ?」 「なら……今更言い出すのはおかしいだろ?」 兵藤が言うと一生が 「忌埜正宗……だからな…… 我逝く道しか通さねぇ……またそれが通用するからな……難儀なお方だ……」 と説明した 兵藤は「……よりによって忌埜正宗かよ……」とボヤいた 「仕方がねぇよ貴史 それも定め……組み込まれし運命って事だよ」 「…だけど………お前……アイツに捕まると……」 「貴史、伊織を不安がらせるな!」 康太に言われて兵藤は……ハッと正気になった 「………伊織……悪かった 絶対に護ってやるからな……お前等二人を!」 「………貴史……」 榊原は兵藤を見た 兵藤は榊原の肩を叩いた 「……そうか……時が来たのか……」 兵藤は呟いた 康太は何も言わず、兵藤を見ていた 避けられない現実がある 果てへと繋がり…… 意味を持つ そんな関わりは必ずある 「と、言う訳だ、OB会は不参加で頼むな」 康太は榊原に抱き着いて兵藤にそう言った 兵藤は「了解!」と言い肩を竦めた そして「……戦闘態勢は何時でも取れる様にしとくわ!」と告げた 康太は頷いた 「………オレの街を血で染めた事実は大きいかんな そろそろ出ねぇとはと想ってた……」 「……だな……で、これが叔父貴から託されたデーターだ」 そう言い兵藤はUSBメモリを康太に渡した 康太はそれを受け取りポケットへ入れた 後はもう……何事もなかった顔をして過ごしていた 「貴史、尾上先輩がオレの事をやっぱし薄幸の美少年とか言ってたぜ」 「………あの人……目医者が必要だな 何が発行の美少年だ……」 「……おい貴史……おめぇの薄幸の漢字は?」 「証明書とかの発行……でどうだ?」 「………発行、発酵、発行……かよ」 康太はメモ帳に書いた 兵藤はそれを見て爆笑した 「どれもお前に合ってるやん」 康太はメモ帳に薄幸と書いた 「これは……あんでねぇんだよ?」 「おめぇは血反吐を吐いても立ち向かうからだろ? 儚く……消えたら飛鳥井康太じゃねぇじゃねぇかよ?」 「………そっか……それもそうだな」 康太はご機嫌に笑った 流石、ツボを押さえた幼なじみだけある 康太は笑いながらも明日を見据えていた 回る 回る 運命は回る 逃れられない運命が……… 姿を現すのは…… 間近に迫っていた

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