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第152話 寂しい

康太はイオリのリードを持って玄関の外に出ていた 榊原は靴を履き、コオのリードを持って外に出た 「寒くないですか?」 榊原が康太に尋ねた 康太は榊原に買って貰ったマフラーを巻いていた 「伊織に貰ったマフラーが暖かいからな大丈夫だ」 「康太、あずきはどうしますか?」 「……あんな小せぇの……飼った事ねぇからな… 散歩はどうして良いか解らねぇな…… 後で貴史に聞いてみるか?」 「そうですねコオ、イオリ、散歩に行きますよ」 榊原が言うとコオは尻尾をフリフリ飛び回っていた 飛鳥井の家を出て歩いていると、桃太郎がワンワンと鳴きながら近寄ってきた 兵藤が桃太郎を連れて散歩に来ていたのだ 「貴史、あずきってもう散歩も大丈夫か?」 「………あずきはもう少し様子見て、近場からスタートして散歩にならす必要があるな コオは誰が育てたのよ?」 「一生」 「一生かぁ、一生は何と言ってるんだよ?」 「家にいねぇからな解らねぇ……」 「家出?」 桜の季節になると家出をする奴だから…… 出てくる台詞はどうしても……こうなる 「家出じゃねぇよ アイツは今白馬に行ってる 来月まで帰って来ねぇと想うぜ」 「白馬?何かあったのかよ?」 「緑川の牧場での調整の失敗があってな…… 白馬へ行くしかなかった…」 「慎一も?」 「そうだぜ! あの兄弟の牧場だかんな」 「………そうか……あずきは俺が少し面倒見てお前に渡してやろうか?」 「それでも良いけどコオとイオリが離さねぇよ」 「なら飛鳥井に行って見てやるよ」 「……今飛鳥井はオレら家族しかいねぇからな…」 「……聡一郎や隼人は?」 「隼人は映画の撮影で、聡一郎も白馬だ 四宮興産の新プラントを白馬に建設したらしくてな 最近は白馬に行きっぱなしだぜ? だからな飛鳥井に来ても留守の時の方が多い」 「………淋しいだろうな…子ども達……」 「………仕方がねぇよ 皆それぞれ……やる事があるからな」 兵藤は翌週から新潟に行かねばならなかった 父親と共に選挙区へと向かい後援者と次の選挙の打ち合わせに入る予定だった ………解っていても……淋しい 康太はもっと淋しいだろう…… 兵藤は時間の許す限り康太と散歩した そして新潟へと向かった 散歩に行っても誰とも逢わないと…… コオとイオリは淋しそう 桃太郎はいない 玉三郎もいない 茶太郎は朝の散歩は来ない…… 散歩に連れて行ってもコオとイオリは淋しそう 飛鳥井の家に帰っても…… 一生達はいなくて…… 淋しそうだった 人が集まる応接間に……人の気配が消えた…… 誰も来ない応接間にコオとイオリは淋しそうに座っていた あずきはコオとイオリを舐めて、元気着けようとした だけど……淋しい応接間に…… コオとイオリのキュンキュン鳴く…… 鳴き声が響いていた

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