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第153話 採寸

康太は榊原の前に座ると、正座をした 「伊織、話があるんだ」 康太に言われて榊原も正座した 「何ですか? 何でも言ってください」 「おめぇの幼稚園の頃の写真が見てぇんだ」 「……僕の?」 「ダメか?」 「写真は実家にあるので母さんに聞いてみます」 榊原はそう言い真矢に電話を入れた 「母さんですか? 僕の康太が、僕の幼稚園の頃の写真を見たいと言ってるのですが……ありますか?」 『あら伊織、あるわよ 今日は休みだから何時でも家にいらっしゃい』 「では5分で行きます!」 榊原はそう言い電話を切ると、康太に上着を着せた 「康太、行きますよ」 手を繫いで下へ下りて行く すると一生と出くわした 「何処へ行くのよ?」 「実家に行きます! 君も来ますか?」 「実家って清四朗さんち? 行く!着いてく」 そう言い榊原は一生を連れて飛鳥井の家を出た 歩いて榊原の家まで向かった インターフォンを鳴らすと、真矢が直ぐに出た 「伊織、本当にピッタリ5分ですね」 苦笑して招き入れた 「アルバムはテーブルの上に出しておいたわ」 「ありがとうございます」 康太はお礼を言った 真矢は笑顔で 「このアルバム、持って行っても良いわよ」と言った 康太は困った顔して 「太陽と大空の幼稚舎の制服の採寸があるんです 一生の子供時代は一緒にいて知ってるから良い 瑛兄の子供時代も写真を見れば解るから想像がつく でも伊織の子供時代は解らなくて、制服の採寸をどうしようと想っていたんだ……」 「あら、もう幼稚舎の制服の採寸の年になったのね……」 真矢は感慨深く……呟いた 「伊織の幼稚園の頃はどんな風に成長しましたか?」 「伊織は小学校の低学年まで、そんなに成長はなかったのよ 笙は結構幼稚園の頃から大きかったけどね、伊織はスローで伸びて行った感じね」 「なら幼稚園の制服はそんなに大きくなくても大丈夫かな?」 「隼人はどうだったの?」 「………隼人は子供の頃の写真はねぇんだよ 神野に隼人の子供の頃のスチール写真を集めさせた で、予想して作るしかねぇ……」 「……大変ね……知り合いに幼稚舎の制服残ってないか聞いてみるわね 洗い替えにはなるわよ」 「真矢さん……義母さんありがとう……」 「……康太……」 真矢は感動していた 「採寸の日、義母さんも行きますか?」 「飛鳥井の家族は行かないの?」 「幼稚舎の入園式の頃は飛鳥井の会社の方の入社式があるから……準備で暇なんてねぇと想う」 「そう……なら私が見届けるわ」 飛鳥井がやれる事は飛鳥井がやる 飛鳥井がやれない事は真矢はやろうと決めていた 「………そうか……新年度だものね 会社も入社式の頃よね」 「会社の入社式はオレも出ねぇとダメだかんな 幼稚舎の入園式とずらして貰ったんだ 真贋と副社長のいねぇ入社式は出来ねぇからな…」 「そうね……康太も伊織も会社には欠かせないものね」 「義母さん、採寸の日、仕事だったら無理しなくても大丈夫です」 「大丈夫よ……今体調崩してて……お仕事休んでるから……」 「義母さん、近いうちに温泉に連れて行きます そこで療養すれば体調も少しは良くなるかも… 無理して子供を産んだってのもあります…… 義母さんに無理させたのはオレだかんな……」 「康太、私は無理なんてしていないわ 貴方に子供を渡すのは私の願いだった 初めて貴方に逢った日に、私は心に決めたのです それを後悔した日はない 年だからね……ガタも来るのです」 真矢はそう言い笑い飛ばした 「幼稚舎の制服、少し大きめで全員作って 育って着られない状態になったら榊原の方で作る そう言うことにしたら? そしたら無理して大きいの着せる事もないわよ」 「…………真矢さん……この子はオレの子なので…… 制服を着れなくするのは成長だけじゃない気がします」 康太がバツの悪い顔で言うと一生が 「そうそう!康太は桜林始まって以来の悪ガキなので、喧嘩や悪さで制服をダメして兄達の制服だけじゃ飽き足らず親戚中から制服を貰い受けたという悪ガキですからね…… 康太の子なら、悪ガキだからな」 一生はそう言い笑った 康太は一生の足を蹴飛ばした それでも一生は笑っていた 後日、修学館 桜林学園 幼稚舎の制服の採寸を測りに真矢と清四朗と共に向かった 子供達は大人しく採寸されていた 音弥に至っては……… 流石モデルの息子だけあって……ポーズまで着けていた 翔は大人しく……採寸されて 流生はメジャーに巻き付いて……採寸は苦戦した 太陽は背伸びして……わざと大きくアピールして 大空は「ちゃわるにゃ…」と店員の手を嫌った 真矢は「伊織も言ってたわ!」と当時を思い出して爆笑していた 榊原は嫌な顔をしていた ハチャメチャな採寸だったが…… 何とか少し大きめでサイズを測り 後は制服が出来る日を待つだけとなった 流生は一生に連れられて兵藤の家に来ていた 美緒は「流生ではないか!」と大喜びした 「お!流生じゃねぇかよ?どうしたよ?」 「ひょーろーきゅん!」 流生は兵藤に飛び付いてスリスリした 兵藤は二階に連れて行った 寝室じゃない方の部屋へと通した 「ひょーろーきゅん!」 「どうした?流生」 「りゅーちゃにぇ」 「おー!」 「よう ち ちゃ……ゆきゅにょ」 流生は言いにくそうに言った 「お!四月から幼稚舎行くのかよ? 兵藤君が送って行ってやるからな!」 「うん!」 「ちぇふきゅ ちゅきゅっちゃにょ」 「お、制服作ったのかよ? 出来上がったら見に行くな 楽しみだな流生達の入園式 俺も行くからな流生」 「あい!」 流生は嬉しそうに片手をあげた 兵藤は流生の頭を撫でた 「俺も制服贈ろうかな……」 兵藤は呟いた 一生は「制服かよ?」と問い掛けた 「康太の子だぜ? 制服は幾つあっても足らねぇと想うぜ?」 「………言うな……言ってやるな」 「康太の子だからな」 兵藤はそう言い笑った 目の前の……男の子供だと言うのは…… 嫌という程に解っている こんなにも酷似した顔ならば…… 誰が教えずとも…… 子供達は気付くだろう…… その日が来ても…… サポートして行くつもりだった お前達の両親は誰よりもお前達を愛してきた筈だ…… と教えてやるつもりだ そんな日は来ない方が良い だが………そんな日が来たなら…… お前達に関われる位には近くにいたい 兵藤の思いだった 「ひょーろーきゅん りゅーちゃにぇ」 流生はニコニコ笑って兵藤に何かを伝えようとしていた 「かぁちゃ ちょっくりにゃんらって」 ニコニコと笑って母と似ていると伝える 兵藤は笑って流生の頭を撫でた 「おめぇは康太によく似てる 本当にかぁちゃソックリだな」 飛鳥井康太の魂を受け継ぎし子供達よ お前達の逝く道が……     穏やかな光に包まれる様に…… 俺は願う 誰よりも願う…… だから…… 頼むから…… 康太の幸せを奪うんじゃねぇぞ

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