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第160話 ‥‥‥‥‥。

「康太……」 榊原は康太の名を呼んだ 康太はそっぽを向いた 「…………さよなら……」 榊原は別れを告げた 康太は唇を噛み締めた 「……………僕の事を……少しは…想い出してくれますか?」 康太は榊原を見なかった 「………早く行けよ……」 榊原は康太に背を向けた 「さよなら…」 榊原はドアを開けた 「大学では声掛けられてもついて行ってはいけませんよ!」 「行かねぇよ…… それよりも遅刻すんだろ?」 「………君を置いて行きたくない!」 「仕方ねぇだろ? オレは大学でおまえは会社だから……」 「………口惜しいです…」 「一生も一緒だから心配するな…」 「余計心配です」 「………伊織、オレが遅刻しちまう! じゃ、後でな!」 康太はそう言い部屋を飛び出しそうとした だが腕を掴まれ抱き締められた 口惜しい…… 離れなきゃいけないなんて… 「……今日は……離れたくありません」 「………伊織……」 榊原は早々に進級を決めた 康太は足らない分を補いに行かなければならなかった でないと3年には上がれない 榊原も頭では解っている 解っているが……… 「……仕事を片づけたら大学に向かいます」 「大丈夫だ……貴史もいる」 「………誰がいても駄目です 僕が君を守りたいのです」 「オレ、大学に行くかんな!」 そう言い康太は飛び出した やってられるか! ほんの数時間離れるだけで…… 永久の別れ並みに…… 深刻な顔されて 挙げ句の果てが『離れたくありません』だ! 康太は真一の車に飛び乗ると「車だぜ!」と急かした 一生も康太の横に座った すると携帯がブーブーと着信を告げた 「出なくて良いぞ!」 康太が言う 一生はLINEした 「大学に行く! 旦那は自分のことをしろよ!」と送信 『……覚えときなさい!』捨て台詞に……たらーんとなる 大学に行って足らない分の講義を受けてお茶をしてると榊原がやって来た 「康太!」 駆け寄ってくる 一生は「………盗聴器でも着いてるのかよ?」と的確に来る榊原にその台詞が出た 「契っているかんな、青龍はオレの覇道を辿れるんだよ……」 康太は契っているから覇道を辿れると教えた 一生は「なる程」と納得した ほんの数時間が耐えられない堪え性のない榊原に一生は笑った これが、あの、青龍だなんて…… 信じられねぇわな 「康太!何もありませんでしたか?」 「………何かある方が不思議だわ……」 康太は笑ってそう言った 「僕の康太」 惜しみもなく吐き出される言葉に女子からの羨望の瞳が注がれる こんなに熱烈に愛されてみたい 釣った魚に餌を与えない男が多すぎる ………でも………実際にやられたら…… 勘弁………だろうけど

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