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第161話 眼医者に行きなはれ! by緑川一生

「………心配です……一生」 榊原は心配そうな声で…… 一生の名を呼んだ 「………旦那?何がそんなに心配なんだよ?」 本当は聞きたくない どうせ康太の事だろうから…… いや、康太の事しか言わないから…… 「一生……僕は目を離したくないのです……」 「………そうは言っても……無理でっしゃろ?」 ずっと見てるなんて訳にはいかない ずっと傍にいて監禁でもしない限り…… いや……監禁していても、ずっと見てるなんて無理やろが……… 「………目を離したら……… 死にかけるんですからね……」 ………そこを突くか…… 本当に目を離した瞬間に死にかけられたもんな…… ずっと傍にいた 傍にいたのに……康太に突き飛ばされ その隙に銃弾に当たりに行くんだもんな…… うんうん………旦那………その気持ちわかるかも…… 「………なくすかと想いました……」 俺もそう想った…… 「僕の元に還ったと想ったら……… 3センチですよ?………3センチで還って来た…… あの時の可愛さと言ったら……」 おい………3センチで心配じゃないのかよ? 可愛さと言ったら…… 俺に……それを求めるな…… 「あんな可愛い康太を目にしたら…… 欲しくなる輩は後を絶たないでしょう」 そんな心配いる? 一生は呆れて聞くのが嫌になった 「………まさか僕は……」 榊原は苦しそうに……胸を押さえた どうしたよ?旦那…… 一生は心配した 「………あんな可愛い康太を目に出来るとは思いませんでした お椀でお風呂に入れれる日が来るなんて…… 綿棒で体躯を洗ってやれる日が来るなんて…… タオルで寝る姿は天使のようでした」 ………鬼太郎の目玉親父……みたいじゃなく??? 天使…… 言うに事欠いて天使と来たか…… 旦那……それは末期症状でっせ…… とは言えない一生であった でもさ……天使だぜ? なぁ、あの3センチの康太…… 天使に見えた?? 俺は……一寸法師か鬼太郎の目玉親父にしか見えなかった…… 延々と語る榊原に一生はイラッと来た 一度聡一郎と慎一と隼人に 「なぁ、3センチの康太……どう思った?」と聞いた時があった 聡一郎は「3センチでも飛鳥井康太でしたね」と感心して 隼人も「ポケットに入れて持ち運びたかったのだ」と残念がった 慎一は「主なれば何ミリでも俺は仕えるだけだ」と感想は貰えなかった 流石と天使のように見えたのは………旦那だけだった 一生は想う その瞳……康太がどんな風に映ってるだ? キラキラで愛らしいのか? んな訳ないやん…… 「………旦那……」 「何です?」 「………やっぱし言っとくわ」 「何をですか?」 「目医者に行きなはれ!旦那」 「………僕は両眼1・0です!」 榊原は一生を睨み付けた 「………視力じゃないなら……何だろうな?」 一生が言うと榊原は…… 分厚い参考書を一生の足の上で落とした 「………あ”……い”じゃ”い”!!」 一生は叫んだ 「僕の康太が一番可愛いのです!」 親バカな飼い主がよく使う台詞 『うちの兎が一番可愛い!』 その台詞と似てるな……と想い一生は笑った 親馬鹿ならぬ、旦那馬鹿 自分の妻が一番可愛いと想うのが 夫婦円満の秘訣らしい 一生は力哉に「力哉が一番可愛い!」と二番煎じをやってのけた すると………力哉から殴り飛ばされた 「浮気した旦那が妻にご機嫌取りしてるみたいなので、やめましょう!」と言われた 夫婦円満の秘訣の取り扱いは……敏感なので気を付けてね! 目医者に行きなはれ! 一生はつくづく想った

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