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五月雨る(9歳と11歳の話)義弟目線

「珍しい」  忘れるなんて、と笑って傘を差し出す義兄にそっけなくしてしまうのは条件反射だ。 「そういう時もあります」 「うん」  近道しましょうと先導して、少し狭い道を行くと、生け垣の紫陽花が美しい路地に差し掛かる。 「すごく綺麗だね」  予想以上に喜んで笑う義兄に、胸がつまってただ頷くことしかできない。 「こんなところ知ってるなら教えてよ」  教えるために傘を忘れたんです。とはついぞ言えなかった。

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