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朝顔市の翌日(10歳と12歳の話)
開く直前の一鉢を買ってもらった義兄が、開花するのを見たいと言いだした。どうするのかと思えば、庭先を観察しながら縁側で夜明けを待つことにしたらしい。ずっと見張ってられると言い張るのを聞き流し、床に入った。
翌朝。東の空がしらじらとしてきた頃に起き、顔を洗ってから様子を見に行けば、やはり深い眠りの中。浴衣から覗く白い胸元が、いやに眩しい。
「咲いてますよ」
返事が無いのは承知の上で話しかけると、横向きから仰向けに寝転がった。起こそうとして傍らに座ると、形の良い唇から寝息混じりに声が漏れた。
「流…」
じっと見つめても安らかな呼吸をするのみで、起きる気配はない。卑怯なのは後で反省する。なめらかな頬に手をあてがって、一瞬だけ奪った。
最初のくちづけは夏の早朝にて。
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