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第一章・5

「あのさぁ」 「はい!」  実に不機嫌そうな、颯真の声。  スタッフは、あえて明るい声で返事をした。 「この収録、没にしない?」 「いや、五条さん。それは無いでしょ」  颯真の気まぐれに散々付き合ってきたはずのスタッフも、この提案には汗をかいた。 「五条さん、お疲れなんですよ」 「ちょっと、一服しませんか?」 「おお、都合のいいことに、すぐそこに喫茶店が!」  颯真の機嫌を治すべく、スタッフは半ば無理やり彼を喫茶店に押し込んだ。

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