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第一章・11
ではここで、その後の玉置 郁実(たまき いくみ)くんからのメッセージをどうぞ。
司会がそう振ると、モニターにはあの時の少年が映し出された。
『こんにちは、五条さん。先日は失礼しました』
首には、颯真と交換したグレーのマフラーが巻いてある。
『五条 颯真を、覚えた?』
『はい。ネットで調べて、頭に叩き込みました』
『また五条さんがこの町を訪ねてきたら、その時は解る自信ある?』
『……多分』
スタジオは、再び爆笑で沸いた。
颯真は、頭を抱えた。
メッセージは『また、美味しいコーヒーを飲みに来てください。待ってます』などと、ほのぼのとした締めくくりだったが、颯真の心は乱れていた。
その後の進行など、覚えてもいなかった。
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