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第一章・13
「こんにちは~」
サングラスをかけた背の高い男に、そう呼び止められて郁実は立ち止まった。
「あ。もしかして……、五条さん? ですか?」
当たり、と颯真はサングラスを外した。
「どうして君は、素顔の俺が解らずに、変装した俺なら判るのかな?」
「そのマフラーで。もしかしたら、って」
そう。
颯真は、あの日郁実と交換したマフラーを巻いていた。
ラスタカラーの、ポップなマフラーを。
「君の方こそ、俺のマフラー使ってくれてるんだね」
「嬉しくって。それで」
頬を染める姿が、初々しい。
二人は並んで、郁実の父が経営する喫茶店に向かった。
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