13 / 142

第一章・13

「こんにちは~」  サングラスをかけた背の高い男に、そう呼び止められて郁実は立ち止まった。 「あ。もしかして……、五条さん? ですか?」  当たり、と颯真はサングラスを外した。 「どうして君は、素顔の俺が解らずに、変装した俺なら判るのかな?」 「そのマフラーで。もしかしたら、って」  そう。  颯真は、あの日郁実と交換したマフラーを巻いていた。  ラスタカラーの、ポップなマフラーを。 「君の方こそ、俺のマフラー使ってくれてるんだね」 「嬉しくって。それで」  頬を染める姿が、初々しい。  二人は並んで、郁実の父が経営する喫茶店に向かった。

ともだちにシェアしよう!