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第一章・26

 やがて父が、郁実にスマホを渡してきた。 「もうすぐ、クリスマスだね。何か、予定はある?」 「いえ、特には」  いけないなぁ、と颯真は笑った。 「せっかくの、高校最後のクリスマス。楽しもうよ」  お父さんにも言ったけど、と颯真は続けた。 「25日に向けて、魔法をかけるから。楽しみにしててね」 「え?」  魔法?  郁実がきょとんとしたところで、颯真は電話を終えてしまった。 「郁実。五条さんの『魔法』って、なんなんだ?」 「さあ……」  でも。  でも、それはきっと、何か素敵なことに違いない。  郁実は、颯真とのひとときを思い返していた。

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