35 / 142
第二章・7
12月25日、クリスマス。
約束通り、颯真は郁実の元へ現れた。
「メリークリスマス、郁実くん!」
「五条さん、本当に来てくれたんですね!」
郁実が無理を言ったんじゃないですか、と父は息子の頭をグリグリした。
「いえいえ、むしろ俺の方が無理言っちゃって」
郁実くんは、好きな人と約束があったんじゃないの?
そう、颯真は笑った。
いいえ、と柔らかく微笑む郁実。
彼氏も彼女も、いませんから。
友達とは、昨日のイブに放課後ゲーセンで少し遊んだ、と言った。
「じゃあ、今からがクリスマス本番だ!」
颯真は郁実の背中を、ぽんと叩いた。
ともだちにシェアしよう!