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第二章・7

 12月25日、クリスマス。  約束通り、颯真は郁実の元へ現れた。 「メリークリスマス、郁実くん!」 「五条さん、本当に来てくれたんですね!」  郁実が無理を言ったんじゃないですか、と父は息子の頭をグリグリした。 「いえいえ、むしろ俺の方が無理言っちゃって」  郁実くんは、好きな人と約束があったんじゃないの?  そう、颯真は笑った。  いいえ、と柔らかく微笑む郁実。  彼氏も彼女も、いませんから。  友達とは、昨日のイブに放課後ゲーセンで少し遊んだ、と言った。 「じゃあ、今からがクリスマス本番だ!」  颯真は郁実の背中を、ぽんと叩いた。

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