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第二章・9

 そんな勿体ない、とやたら恐縮する父が、滑稽だ。  郁実は、笑った。 「父さん、せっかく用意してくださったんだから」 「そ、そうだな。じゃあ……」 「開けてください」  中からは、日本には輸入されていないジャズの名盤が何枚も入っていた。 「お、お宝だぁ!」 「郁実くんに、お父さんはジャズがお好きだと聞いて」  ありがとうございます、とお礼もそこそこに、父はCDをセットしている。 「父さんったら、子どもみたい」  僕からも、お礼を言います、と郁実も頭を下げた。 「郁実くんにも。はい、プレゼント」

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