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第三章 別れ

 それからも颯真は、事あるごとに郁実を訪ねた。  年始、バレンタインデーはもちろん、少ない空き時間やオフを使っては、喫茶店へ通った。 「僕、もう颯真さんのこと覚えたのに」 「郁実くんに会いたくってね」 「だから父親の前で、息子を口説くのよしてください、ってば」  そんな三人のやりとりを、楽しく過ごした。 「もうすぐ卒業だね」 「はい。3月1日です」 「卒業祝い、しようね!」  残念ながら1日当日は、24時間スケジュールが埋まっている。  だが、その4日後に喫茶店を訪れる約束をした。 (お祝い、何にしようかな。世間一般では現金だけど、プラスαで何かあげたいな)  そんなことを考える時間も楽しく、颯真は日々を送っていた。

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