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第三章・4
「颯真です♪」
「颯真さん、郁実です」
「どうしたの?」
「急に、すみません。お仕事中でしょう?」
「いいのいいの。今、休憩だから」
実は、と郁実の声は暗い。
そこでようやく、颯真は嫌な予感を覚えた。
「5日の卒業祝い、中止になりました」
「え!? 中止、って。どういうこと!?」
短い沈黙の後、郁実の声は小さかった。
「父さんが。父が、亡くなりました」
「……嘘」
あんなにお元気だった、お父さん。
いつも郁実くんに寄り添い、彼を温かく守っていたマスターが!?
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