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第三章・7

 母も無い、親戚も無い、ひとりぼっちの郁実。  ただ、葬儀には実にたくさんの人がやって来た。  喫茶店の常連客に、近所に住む人。  そして、マスターの友人たち。 「やっぱり郁実くんのお父さんは、大勢の人に慕われていたんだね」 「はい」  しかし、火葬が終わり、精進落としも済むと、誰もいなくなった。  一人になる郁実を案ずる者もいたが、彼らにもそれぞれの日常がある。  しっかり者の郁実をひとしきり褒めた後、立ち去って行った。  残ったのは、颯真ただ一人。 「郁実くん。コーヒー、飲もうか」 「はい」  臨時休業の札を掛けた喫茶店に、香ばしい匂いが漂った。

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