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第三章・10
久々に訪れる、颯真のマンション。
以前招かれた時より、ものが増えている気がした。
「いずれは、こっちに居を移そうと思ってたから」
そう言う颯真は郁実をバスルームへ放り込むと、携帯を取り出した。
電話やメール、ラインが溜まりに溜まっている。
録音された悲壮なマネージャーの声には、申し訳ないが笑った。
急ぎお詫びと明日の確認の電話を済ませたところで、郁実がバスルームから出てきた。
「すみません、一番風呂いただいて」
「古風だね、君は。全然かまわないよ」
「お風呂にテレビがあって、驚きました」
「最近のマンションには、そういうのもあるから」
俺は見ないけどね、と颯真は笑った。
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