55 / 142
第四章 誕生日
「白線で一時停止だよ」
「はい」
郁実は、静かにブレーキを踏んだ。
郁実が父を失ってから、時が過ぎていた。
彼が一人で思い出に泣かされないよう、颯真は自動車学校を勧めた。
「仮免許取れたら、一緒に練習しよう」
「はい!」
そして今、郁実は助手席に颯真を乗せて、ポルシェを運転している。
他の自動車が進んで道を譲ってくれるのは、何も『仮免許運転中』の札のおかげだけではないだろう。
ポルシェに傷でもつけたら、大変!
そういう訳で無茶な煽りに遭うこともなく、郁実は目的の場所へと車を着けることができた。
ともだちにシェアしよう!