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第四章・6

「颯真さん、今日はオフなんですか?」 「うん。明日の10時までフリーだよ」 「じゃあ、お願いがあるんですけど」 「なに何?」  郁実は、今夜の夕食はレストランでディナーなんてしなくていいから、ずっとマンションでのんびり過ごしてほしい、と願った。 「せっかくの誕生日だから、御馳走しようと思ってたんだけど」 「颯真さんと一緒なら、どこで何を食べても御馳走ですから。だから、ゆっくりしてください」 (ああ! 何て嬉しいことを言ってくれるんだ!)   『颯真さんと一緒なら、どこで何を食べても御馳走ですから』  郁実の性格からして、これは狙って言ったのではないだろう。  心から素直に、そう思ってくれているに違いない。

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