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第四章・7

 桜を堪能した後、二人は老舗の百貨店へ行って郁実のプレゼントを選んだ。  コーヒーに関する書籍を数冊と、革の靴だ。 「たったこれだけでいいの?」 「これだけ、だなんて。こんなにたくさん、いいものを買ってもらったのに」  靴はオーダーメイドにしてもいいのにな、と颯真は考えていた。  だが庶民の郁実は、10万円以上もする靴に恐縮していた。 「じゃあ、今夜の食事を買いに行こう」  そう言って、颯真はそのまま地下階に降りた。  ローストビーフに、キャビア、フォアグラ。  駄菓子屋でお菓子でも買うように、颯真はデリカで高価な惣菜を買う。 「郁実くん、何か食べたいものある?」 「え、えっと……」  

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