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第四章・8

   じゃあ、ブランデーケーキを。  郁実は、そう答えた。  僕のために、珍しい食事を用意してくれる颯真さん。  何か一つは、颯真さんの好きなものを。 「バースデーケーキなのに?」  颯真は、柔らかく笑った。  郁実の気遣いは、彼にしっかり届いていた。  郁実くん、相変わらず優しいな。  クリスマスに食べた、手作りのブランデーケーキを颯真は思い出していた。  あれを越える味はないだろうが、有名店舗のスウィーツを買った。

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