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第四章・9

 食卓には、郁実の父の写真も飾った。 「お父さん、郁実くんが19歳になりましたよ」  写真の前に置かれたグラスには、シャンパンが注いである。  それに自分のグラスを傾け、颯真は郁実の誕生日を祝った。 「おめでとう、郁実くん!」 「ありがとうございます」  お酒は、20歳になってから。  颯真は郁実のグラスにはフレッシュなグレープフルーツジュースを注いだ。 「あと一年、早く過ぎないかな。郁実くんと、晩酌したいよ」 「もう少しだけ、我慢してくださいね」  二人で、楽しく笑う。  郁実も、父の急死を乗り越え始めていた。  

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