65 / 142
第四章・11
答えを出せないまま、颯真はバスルームから出た。
「ずいぶん長かったですね」
「う~ん。のぼせちゃったよ」
冗談めかしてそう答え、颯真はドライヤーを手にした。
「颯真さん、僕が乾かしますよ」
「いいの?」
初めてのことだ。
颯真はドキドキしながら、郁実に髪をまかせた。
まるで、少年の頃の初恋を再び味わっているかのよう。
郁実に触れられることはとても心地よく、颯真は眼を閉じて浸った。
「颯真さん、起きてますか?」
「大丈夫だよ」
髪が整い、いよいよ二人はベッドへ向かった。
ともだちにシェアしよう!