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第四章・12

 ベッドに潜っても、もう郁実は颯真にかじりついてくることはなくなっていた。  父の死後、数日はそうやって寂しさや不安を抱え、颯真に縋っていた郁実。  一通りの法要が済み、歳も一つ重ねた。  郁実は、少し大人になっていた。  だから……。 「颯真さん、お願いがあるんですけど」 「何かな?」  今日は誕生日だから、何でも願いをきいてあげる、と颯真は答えた。 「あの、ですね。僕、19歳になりました」 「?」  それは、解ってる。  さっきまで、一緒にお祝いしてたじゃないか。  だから……。 「だから、僕を、抱いてください」 「ッ!?」  颯真は、声を失った。  まさか、郁実くんの方から誘ってくれるなんて!

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