67 / 142

第四章・13

「颯真さん、時々眠ってる僕に、キスしてたでしょう」  バレてたのか!  颯真は、顔から火が出る思いだった。 「いや、あの。あんまり寝顔が可愛いもんだから……」 「これまで、いえ、今日もこんなに親切にしてもらって。だから僕、恩返しがしたいんです」  え?  恩返し? 「郁実くん、俺が欲しいのは恩返しじゃないよ」  君の、愛が欲しい。  颯真は、真剣にそう言った。  映画やドラマの中でしか使ったことのないセリフを、郁実に贈った。

ともだちにシェアしよう!