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第四章・14

「でも……、僕なんかより綺麗だったりカッコよかったりする俳優さんが……芸能界にはたくさん……」  珍しく歯切れの悪い郁実を、颯真は抱き寄せた。 「君ほど俺の心まで潤してくれる人は、他にいないんだ」 「颯真さん」  二人は、額と額を合わせた。 「郁実、って呼んでもいい?」 「……はい」  静かに、唇を合わせた。  初めての夜が、幕を開けた。

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