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第五章・2
そっと唇を割り、舌を差し入れる。
びくんとすくんだ郁実の舌だったが、やがて颯真に絡めてきた。
ああ、やっぱり知ってたか。
大人のキスを。
少しの嫉妬を含んだ、安堵感。
何も知らない子どもを抱くわけじゃない、との保証は颯真を少しだけ大胆にした。
舌を擦り付け、歯列をなぞる。
上顎の裏を、舌先でくすぐる。
やがて息苦しくなったのか、郁実が唇を離した。
はぁはぁと、息が上がっている。
「颯真さん……、やっぱり大人なんですね」
キス、すごいです。
そんな誉め言葉に、颯真は顔も知らない郁実の元カレに誇って見せた。
(どうだ! キスは俺の方が巧いからな!)
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