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第六章 愛してるから

 郁実は、ほどなくして喫茶店を再開した。  店の存続を心配していた常連客は、まだ若くして店長になった郁実を応援すべく、変わりなく訪れてくれた。  店内を流れる音楽は、父の生前と変わらず、ジャズだ。  だが、内装を変えた。  お客さんが増えますように、と颯真がプロデュースしテーブル、椅子などの家具から観葉植物、壁の色調、窓辺の装飾まで一新させた。 「何だか、別の店になったみたいだねぇ」 「いいえ、父さんの店は何にも変わりませんよ」  常連に笑顔で答える、郁実。  颯真の気遣いは、解っていた。

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