82 / 142
第六章 愛してるから
郁実は、ほどなくして喫茶店を再開した。
店の存続を心配していた常連客は、まだ若くして店長になった郁実を応援すべく、変わりなく訪れてくれた。
店内を流れる音楽は、父の生前と変わらず、ジャズだ。
だが、内装を変えた。
お客さんが増えますように、と颯真がプロデュースしテーブル、椅子などの家具から観葉植物、壁の色調、窓辺の装飾まで一新させた。
「何だか、別の店になったみたいだねぇ」
「いいえ、父さんの店は何にも変わりませんよ」
常連に笑顔で答える、郁実。
颯真の気遣いは、解っていた。
ともだちにシェアしよう!