86 / 142

第六章・5

「お待たせしました」 「ありがと♪」 「おいしそう!」 「写真、写真!」  席を去る郁実の背中に、小声が聞こえてきた。 「ね、あの子可愛いよね」 「バイトくんかなぁ?」 「店長、留守なのかな」 (参ったな……)  郁実は、店長ではなくバイトと思われたらしい。  仕方ないか、こないだまで高校生だったんだし。  早く店長の貫録を身につけたい。  早く大人になりたい。

ともだちにシェアしよう!