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第六章・10

 同じベッドに横になると、颯真はいつもこう言う。 「郁実。今夜、いい?」  忙しくて疲れてて、眠ってしまいたいだろうに、こうやっていつも僕を求めてくれる。 「颯真さんは? 疲れてないですか?」 「郁実で充電したいんだ」  仮に郁実が、『今夜は嫌だ』と言えば、颯真は無理強いしないだろう。  そういう男だ、颯真は。  そんな風に、郁実はどんどん颯真に惹かれてゆく。  彼と共に寝起きできるのは、同じ時間を共有できるのは、本当にわずか。  それでも、それだからこそ、郁実は颯真をいつも新鮮な目で見ていた。  

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