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第七章・8

「颯真さん、仕事を選ばないのが信条だったんじゃないですか?」 「うん、そうだった」  過去形!?  会話半ばで、颯真は郁実にキスをしてきた。 「そ、そうま、さ……」  湯上りの、温かな郁実の舌を、颯真はじっくりしゃぶって来た。  唾液を絡め、甘いキスをする。  郁実もまた、颯真の舌を夢中で吸った。  会いたいと、切ない気持ちを持て余していたのだ。  これ以上の嬉しいサプライズは、なかった。  ゆっくり唇を離し、颯真はかすれた声で言った。 「やっぱり、ダメだ」 「何が、です?」 「郁実以外の誰かと、今みたいなキスは、もうできない」

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