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第七章・11

 干されるかもしれないな、と思った。  芸能界に、俺の居場所はなくなるかもしれない。 「ね、郁実」 「はい」 「俺が事務所クビになったら、郁実の店で雇ってくれる?」 「何、縁起でもないこと言ってるんですか!」  だけど、可能性が無いわけじゃない。  それでも颯真さんは、僕を選んでくれたんだ。  胸が、いっぱいになった。  そんな郁実を、颯真はぎゅうと抱きしめてくる。 「な、郁実。結婚、しようか」 「え……」 「お父さんの喪が明けたら、結婚しよう」 「う……」 「ん?」 「う、うぅ。うぅう……」  泣かせてしまった。

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