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第八章・2

 郁実が交通事故に遭ってから、一週間が過ぎていた。 「まだ意識が戻らないのか……」  病院の廊下には、颯真の姿が。  ICUで治療を続けている郁実を毎日見舞っているが、一向に病室が変わる気配がない。  郁実の事故現場に居合わせた喫茶店スタッフの佐藤が、グループラインで他のスタッフにも連絡した。  チーフで一番年長の久野だけが、郁実と颯真が同じマンションで暮らしていることを知らされていた。  そこで、久野から颯真へと連絡があった、というわけだ。  頭部からの出血はあったが、幸い神経を傷つけるような怪我ではない、と医師から説明は受けている。  

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