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第八章・3

「早く起きろよ。この眠り姫」  病院のスタッフは、この救急患者の後見人が五条 颯真だったことを非常に驚いたが、そこはプロだ。  外部に情報を漏らしたり、こっそり撮影したりすることは控えてくれていた。  眠り姫だが、事故後から七日経つのだ。  日に日に血色のよくなる郁実に、動転した悲壮感は薄れ、颯真はやや落ち着きを取り戻していた。 「また、来るよ」  意識のない郁実にそう伝え、颯真はマンションに帰った。  誰も待つ人のいない、空っぽのマンションへ。 「一人暮らしって、こんなに寂しいもんだったっけ?」  いつもは、帰ると郁実がいた。  必ず、郁実が待っててくれたのに。 「郁実」  思わず、涙が流れそうになる。  そこへ、連絡が入った。

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