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第八章・4

「はい……、はい! あの、すぐ行きます!」  連絡は、病院からだった。 「郁実が……、起きた!」  病院から、郁実の意識が戻った、と連絡が入ったのだ。  面会時間は決まっているので、顔を見ることはできない。  だが、それでも颯真は病院へ向かわずにはいられなかった。  それこそ、自分が人を撥ねるような勢いで車を飛ばした。  病院へ到着したが、ICUの扉が開くことはない。  だが、この向こうで郁実が眼を開けているのだ。 「よかった。……よ、かったッ……」  最悪、もう二度と眼を覚まさないんじゃないか、と思っていた。  後は、面会時間まで待つだけだ。  颯真は、久々に晴れ晴れとした心地だった。

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