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第八章・5

 面会前に、スタッフに釘を刺されたことは。 「玉置さんは、まだ意識が混濁しています。あまり刺激は与えないでください」  意識が混濁。  颯真の心に、わずかに影が差した。  どういうことだ?  寝ぼけてる、ってことか?  しかし、久々に覗き込む澄んだ郁実の眼を見ると、そんな影など吹き飛んだ。 「郁実!」 「……」  ぼんやりとだが、こちらを向いてくれた郁実。 「無事で、よかった!」  思わず手を握ろうとして、スタッフを見た。  これは、OK?  頷く彼に心の中でお礼を言うと、颯真は郁実の手を取った。  

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