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第九章・3
「でも、これ以上五条さんにご迷惑をおかけするには……」
「迷惑!? とんでもない。好きでやってるんだから、気にしないで!」
それより、と颯真は話題を逸らした。
「コーヒー淹れてくれるかな? お湯は、俺が沸かすから」
「はい」
コーヒーを淹れる腕は、ちっとも衰えていない郁実。
体が覚えているのだろう。
(体が覚えてる……?)
だったら、郁実を抱けば、俺のことを思い出してくれるのか?
俺と過ごした、あの日々を?
いや、と颯真は首を振った。
足と同じだ。
焦ると、きっとろくなことにならないだろう。
「五条さん、お湯が沸いてます」
「あ、うん」
想いを振り切り、颯真はケトルを持ち上げた。
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