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4-5
夕食を終えて、お風呂も本当に意味がないくらい一瞬だけ一緒に入ったあとは、書斎のちゃぶ台に向かい合って頭を突き合わせていた。
「制限時間は20分、原稿用紙2枚に過不足なく。準備はいいかね?」
「はい」
きょう1日を、端的にまとめる。主観を入れないように、事実だけを並べる。
こんなドタバタした1日を800文字以内にまとめるなんて無理だと思ったけど、先生曰く、要約する練習というのは、すごく文章の練習になるらしい。
「それじゃあ、よーい、どん」
合図とともに、シャーペンを走らせる。
先生は『時系列に』とは言っていないから、まずは、きょうが桜桃忌であることを書くべきだ。
そのせいで先生は休み、俺は下連雀から団子坂へ走り、人様の前でキスする羽目になり、お墓でとんでもないことを……
「わぁああっ!」
「ん?」
横で本を開こうとしていた先生が、顔を上げた。
「何事かね」
「思い出し恥ずかしです」
「そんな悠長なことをしていたら間に合わないよ」
「はい……」
書いては消し書いては消ししながら、なんとか時間内に書き切った。
先生は黙って紙を手に取り、15秒でそれを読む。
「うん。悪くないよ」
「え! ほんとですか!」
「ちゃんと漏れなく書いてるし、過剰に盛り上がったりすることもなく、説明の順番も分かりやすい。強いて言うなら、書くやり方が悪いかな。何度も書いて消すのは時間の無駄だし、この枚数だからできることだからね。なるべく迷わず一息に書けるように、頭の中で構成を考えてから書きましょう」
なんだか、じーんとしてしまった。
ほめられたのもうれしいし、なんというか、ちゃんと教えてくれたことが感動的だ。
きょう1日の振る舞いを見ていたら、先生というよりは、大きな子供だったし。
「ありがとうございました」
ぺこっと頭を下げて顔を上げたら、先生の整った顔が目の前にあった。
「わっ」
「もういいでしょ?」
「えっ!?」
押し倒されて、思い切り頭を畳に打ち付ける。
「痛った……」
何をするんだと抗議する間もなく、先生が覆いかぶさってきた。
「先生、ちょっと。寝室に移動してください。本倒しちゃいそう」
6畳の床の上には、本の塔だらけ。
「君は甘え上手だね」
何をどう曲解したのかは分からないけど、そのままお姫さまみたいに横抱きにされて、寝室に連れて行かれた。
布団の上にぽいっと投げ捨てられたと思ったら、豪快に浴衣を脱がされた。
「ちょっと、先生。急すぎます」
「何?」
「心の準備が……」
「さっき何の準備もなく書き出したくせに」
作文とこれは関係ない、のに、荒々しくキスされたら、そんな考えはぽーんとどこかへ行ってしまった。
「ん、……んっ」
先生の浴衣の襟 元にしがみつく。
あったかい舌が触れ合うと、それだけで体温が上がる感じがした。
ダメだ。先生が好き。かなわない。
「大河、触ってみて」
手を握られて、そのまま、先生の浴衣の下の方へ導かれる。
少し固くなったそれを布越しに感じて、心臓がドキドキと鳴った。
「君がこうしてる」
こくりとうなずくと、笑ってなでてくれた。
先生も着ているものを全て取り、俺の体をまたいで、素肌をくっつけながら深いキスをくれた。
ちゅ、ちゅ、と少しずつ降りてきて、少しじらしたあと、乳首をきつめに吸われる。
「ん、ンッ」
「これが欲しかったんだよ。そんなはずはないのに、甘酸っぱいフルーツみたく感じるのはなぜだろうね」
「……はぁ、んっ、ん」
先生の舌の動きに合わせて、体がビクビクと跳ねる。
先生は「可愛い」と言いながら、口で愛撫をしつつ、全身を空いた手でなでまわして、俺を昂 らせた。
下腹部が熱くて、早く触って欲しい。
なのに先生は、そこだけを避けるように、太ももやお腹をなでる。
もどかしくなって、ついに言ってしまった。
「先生、あの……固いとこ、触ってください」
先生は満足そうに「素直でよろしい」とつぶやいたあと、ゆるっとペニスを握ってきた。
上下されると、ひとりでに腰が浮く。
下では決定的ではない刺激を受けつつ、乳首は吸われたりなめられたり、指でくりくりとつままれたり。
「ぁ、はあ、ん……っ、はぁっ」
「大河の声は可愛らしい。僕の感触を味わって漏れ出る吐息がね、とても趣がある」
趣って何だ、とちょっと考えようとしたけど、スピードを上げてしごかれたら、思考が飛んでしまった。
「あぁッ」
あごが跳ね上がる。
シーツを握りしめながら、もう達したいのだと、腰をくねらせて伝えた。
「ねだるのがうまいね」
「ん、はぁ……もうイキたいです」
「いいよ。桃源郷を見ておいで」
滴 る先走りで、ぐちぐちと粘着質な音がする。
「あ、ぁあっ……もう、あ、イッちゃう、あ、んあッ」
先生は何も言わず、ゴリゴリと素早くしごく。
「……っ、はあ、ぁ、イ、ク……ッぅああっ……!ぁ……ッ……!…っ、……!……」
ドッと熱を吐き出した。
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