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 夕食を終えて、お風呂も本当に意味がないくらい一瞬だけ一緒に入ったあとは、書斎のちゃぶ台に向かい合って頭を突き合わせていた。 「制限時間は20分、原稿用紙2枚に過不足なく。準備はいいかね?」 「はい」  きょう1日を、端的にまとめる。主観を入れないように、事実だけを並べる。  こんなドタバタした1日を800文字以内にまとめるなんて無理だと思ったけど、先生曰く、要約する練習というのは、すごく文章の練習になるらしい。 「それじゃあ、よーい、どん」  合図とともに、シャーペンを走らせる。  先生は『時系列に』とは言っていないから、まずは、きょうが桜桃忌であることを書くべきだ。  そのせいで先生は休み、俺は下連雀から団子坂へ走り、人様の前でキスする羽目になり、お墓でとんでもないことを…… 「わぁああっ!」 「ん?」  横で本を開こうとしていた先生が、顔を上げた。 「何事かね」 「思い出し恥ずかしです」 「そんな悠長なことをしていたら間に合わないよ」 「はい……」  書いては消し書いては消ししながら、なんとか時間内に書き切った。  先生は黙って紙を手に取り、15秒でそれを読む。 「うん。悪くないよ」 「え! ほんとですか!」 「ちゃんと漏れなく書いてるし、過剰に盛り上がったりすることもなく、説明の順番も分かりやすい。強いて言うなら、書くやり方が悪いかな。何度も書いて消すのは時間の無駄だし、この枚数だからできることだからね。なるべく迷わず一息に書けるように、頭の中で構成を考えてから書きましょう」  なんだか、じーんとしてしまった。  ほめられたのもうれしいし、なんというか、ちゃんと教えてくれたことが感動的だ。  きょう1日の振る舞いを見ていたら、先生というよりは、大きな子供だったし。 「ありがとうございました」  ぺこっと頭を下げて顔を上げたら、先生の整った顔が目の前にあった。 「わっ」 「もういいでしょ?」 「えっ!?」  押し倒されて、思い切り頭を畳に打ち付ける。 「痛った……」  何をするんだと抗議する間もなく、先生が覆いかぶさってきた。 「先生、ちょっと。寝室に移動してください。本倒しちゃいそう」  6畳の床の上には、本の塔だらけ。 「君は甘え上手だね」  何をどう曲解したのかは分からないけど、そのままお姫さまみたいに横抱きにされて、寝室に連れて行かれた。  布団の上にぽいっと投げ捨てられたと思ったら、豪快に浴衣を脱がされた。 「ちょっと、先生。急すぎます」 「何?」 「心の準備が……」 「さっき何の準備もなく書き出したくせに」  作文とこれは関係ない、のに、荒々しくキスされたら、そんな考えはぽーんとどこかへ行ってしまった。 「ん、……んっ」  先生の浴衣の(えり)元にしがみつく。  あったかい舌が触れ合うと、それだけで体温が上がる感じがした。  ダメだ。先生が好き。かなわない。 「大河、触ってみて」  手を握られて、そのまま、先生の浴衣の下の方へ導かれる。  少し固くなったそれを布越しに感じて、心臓がドキドキと鳴った。 「君がこうしてる」  こくりとうなずくと、笑ってなでてくれた。  先生も着ているものを全て取り、俺の体をまたいで、素肌をくっつけながら深いキスをくれた。  ちゅ、ちゅ、と少しずつ降りてきて、少しじらしたあと、乳首をきつめに吸われる。 「ん、ンッ」 「これが欲しかったんだよ。そんなはずはないのに、甘酸っぱいフルーツみたく感じるのはなぜだろうね」 「……はぁ、んっ、ん」  先生の舌の動きに合わせて、体がビクビクと跳ねる。  先生は「可愛い」と言いながら、口で愛撫をしつつ、全身を空いた手でなでまわして、俺を(たかぶ)らせた。  下腹部が熱くて、早く触って欲しい。  なのに先生は、そこだけを避けるように、太ももやお腹をなでる。  もどかしくなって、ついに言ってしまった。 「先生、あの……固いとこ、触ってください」  先生は満足そうに「素直でよろしい」とつぶやいたあと、ゆるっとペニスを握ってきた。  上下されると、ひとりでに腰が浮く。  下では決定的ではない刺激を受けつつ、乳首は吸われたりなめられたり、指でくりくりとつままれたり。 「ぁ、はあ、ん……っ、はぁっ」 「大河の声は可愛らしい。僕の感触を味わって漏れ出る吐息がね、とても趣がある」  趣って何だ、とちょっと考えようとしたけど、スピードを上げてしごかれたら、思考が飛んでしまった。 「あぁッ」  あごが跳ね上がる。  シーツを握りしめながら、もう達したいのだと、腰をくねらせて伝えた。 「ねだるのがうまいね」 「ん、はぁ……もうイキたいです」 「いいよ。桃源郷を見ておいで」  (したた)る先走りで、ぐちぐちと粘着質な音がする。 「あ、ぁあっ……もう、あ、イッちゃう、あ、んあッ」  先生は何も言わず、ゴリゴリと素早くしごく。 「……っ、はあ、ぁ、イ、ク……ッぅああっ……!ぁ……ッ……!…っ、……!……」  ドッと熱を吐き出した。

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