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12 寂しさを埋める

 伊吹から顔色のことを言われ、少し気にするようになった。元々が痩せ形で筋肉量も同年代と比べたらきっと少ない。所謂モヤシ体型……男として少し情けないとも思うけど、太っているよりかはマシだろう。他人とセックスする時も、体型のことや顔色のことを咎められたことはないし、寧ろカッコいいだの可愛いだの褒められることばかりだったから、伊吹の考えすぎだとも思った。 「そんなに酷いかね……」  部屋で一人、鏡の前で顔を撫でる。少し浮き出た腰骨に手を這わせ、最後に食事をしたのはいつだったか思い出そうと首を傾げた。食べ物の味がよくわからなくなってきたのは恐らく常用している薬のせい。それでも元から食に対する欲もないから気に留めていなかった。 「そんな滲み出るほど俺、薬臭えの?」  一々伊吹の言葉が気になってしまい、俺は自分の体をクンクンと嗅いだ。そんなことをしたって俺に匂いがわかるわけもなく、ただあの時の伊吹の怒ったような心配したような顔を思い出し、少し胸がちくっとした。  着替えを済ませ一人部屋から出てコンビニに向かう。喉越しの良さそうなものや、味の濃いものなら味もわかり沢山食べられるかな? と、弁当や菓子を幾つかカゴに放り店内を歩いた。ぼんやりと棚を眺め、イチャついているウザいカップルを横目で見ながらふと手元のカゴの中を見る。デミグラスソースのたっぷりかかったオムライスと海藻サラダ、ヨーグルトにチョコレートにピザトースト……それを見て、何でこんなものを買おうとしているんだと我に返った。  結局ガムとお茶だけ購入して外に出る。弁当を買ったところで部屋で一人食べても美味しく感じるわけがない。味がわからないのも勿論だけど、一人は寂しいんだ。定期的に訪れる孤独感に、慣れたつもりでも結局誰かを求めて温もりを探してしまう。気がついたらまた俺は、見知らぬ男と約束を取り付けていた。 「理玖君? 待った? うわ……写真より若くてカッコいいね」 「ふふ……ありがと」  また今夜も俺は知らない男と恋人ごっこ。親密デートよろしく体を寄せ合いレストランに向かう。チヤホヤされ、愛されていると錯覚しながら食事をとれば、少しは心も満たされ美味しいと感じることができた。 「……食べてる口元、エッチだね」  テーブルの上でそっと俺の手に触れ、熱い視線を送ってくる。最初からそれが目的なのはわかっているから、俺も期待に応えて思わせぶりに舌を出し唇を舐めた。 「そんなにエッチ? どうしたい?」 「ん……早く理玖君にキスしたい」  周りに聞こえないくらい小さな声で囁きあう。淫猥な視線に気持ち引きながら、俺達は食事を済ませてホテルに向かった。 「俺ね、理玖君みたいな可愛い子をグズグズにしてやるのが好きなんだ」  そう言って男は部屋に入るなり俺の顎をとり乱暴にキスをする。キス自体嫌いじゃないのだけど、こうやって乱暴にされるのは俺はあまり好きではなかった。きっと一方的な行為がダメなのだろう。「待って」と軽く制しても男は止まらず、そのまま舐られながらベッドまで押しやられてしまった。 「どんな体位が好き? どんな事されると感じる? ねえ……俺に詳しく教えてよ」  俺の身体中に舌を這わせながら、恍惚の表情を見せ服を脱がしていく。俺を裸に剥きながら「綺麗だ」「早く挿れたい」「こんなに勃起してるよ」「もっと奥、見せろよ」と、淫らな言葉を俺に注ぐ。正直ちょっと煩いな……なんて思いながら、恥じらうフリをして「やだ……」と顔を隠した。  

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