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22 発情期

 前触れもなく突然始まった理玖の発情期(ヒート)──  俺はいつも通りに店に入り、一人開店準備をしていた理玖を見て背筋が凍った。兄の良樹を見ていたからわかる。間違いない……じきに発情(ヒート)の波がくる、そう思った俺は慌てて理玖を事務所に閉じ込めた。  正直動揺を隠せなかった。理玖は自分のことをβだと言っていた。面接の際にはΩを蔑む発言さえしていたのに……まさか理玖自身がΩだったとは俺は今の今まで気付けずにいた。  Ωは個人差はあれど定期的に発情期が訪れる。それが当たり前だと思っていた。薬で軽減されるとは言え、αからしたらその発情は僅かながら感じ取ることができた。それなのに理玖には一切それを感じさせる要因がなかった。この店に来て何年経つ? 何で俺は理玖のバース性に気がつかなかったんだ……でもそんな事を今考えたところでしょうがない。この状況をどうするのかが先だ、そう思い俺は他の従業員に店を任せ理玖のいる事務所に戻った。  思った通り、理玖は重い発情に苦しめられ身動きも取れず床に蹲っていた。見たところ薬を飲んだ形跡もない。Ωなのに抑制剤を常備していないのかと疑問に思いながら、俺は理玖に声をかける。俺自身予め服用していた薬もあまり効果がないのか、この部屋に入った途端にどうしようもない情欲に駆られ体が疼いた。 「理玖、理玖? 聞こえるか? お前恋人は?」 「……そんなのいない、いいから……早く、頂戴……店長……」 「………… 」  理性を残しつつも抗うことが出来ずに俺に慰めを乞う理玖を見て、俺の理性が地響きを伴うかの如く激しく揺らぐのがわかった。今までの理玖の行動を思い返し、自分がΩだという事をひた隠しにしながら「運命」を探していたのかもしれないと頭を過り、僅かな理性を奮い立たせた。絶対に流されて理玖を抱いてはいけない、このまま抱いてしまえば間違いなく俺はその頸に歯を立ててしまうとわかっていたから…… 「ごめんな……少し堪えろよ……」  俺は持っていたΩ用の抑制剤を自分の口に放ると、直接口移しでそれを飲ませた。理玖の喉が小さくコクリと動くのを確認し、俺はすぐさま離れようと立ち上がる。 「嫌だ」  そう言った理玖は俺の腕を掴んで離さない。薬を飲ませるためとはいえキスなんてしてしまったからか、もう抑えがきかなくなってしまった理玖は強引に俺の服を剥ぎ馬乗りになってきた。  とりあえず、抑制剤の効果が出るまで……俺はなんとかこの場を持ち堪えなければならない。あられもない姿で滾った俺を受けいれようと跨がる理玖を突き飛ばすように押し倒し「ごめんな」と心の中で何度も謝りながら、ひたすら理玖の熱がおさまるまで手淫で慰め、自分自身も今にも切れそうな理性の糸を何とか繋ぎとめこの場を凌いだ。

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