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45 そんなの認めない

「もしかしてさ、理玖が店で突然発情期(ヒート)を発症した日って……翔君は関係ある?」 「……え?」  俺が薬でΩの性を押さえ込んでいた時期、発情期なんてものは無いも同然だった。健康な体と引き換えに俺はΩの性をひた隠しにしていた。それがあの日、突然崩れた── 「翔と初めて会った日……の次の日」  記憶を辿る。そう、あの時は何も気付かなかったけど、伊吹に言われて思い出す。翔と初めて会った日、共に一夜を過ごした日。そして次の日俺は忘れかけていた発情に襲われたんだ。  そして最近でも同じことがあった…… 「この前の時期外れの発情も、翔君が来店した日だったね」 「………… 」  ふと伊吹の手が俺の瞼を塞いだ。     違う──  違う……違う、翔は関係ない。あの時の突発的な発情も、この苛々も、翔とは何も関係ない。それなのに何でこんなに感情が揺さぶられるようにして涙が溢れてしまうのだろう。 「翔は関係ない。違う……違うから!」 「理玖? 翔君はきっとαだよ。そして理玖とは何か特別な絆で繋がっている存在だ。α個人の持つフェロモンに理玖は反応しているんだよ」  伊吹はΩはαの微量なフェロモンに触れ、発情が誘発されてしまうことがあると言う。でもそれが起こるのはすでに番っている者や「運命の番」のように強い絆で繋がっている者だけだと……  翔がαなのは初めて会った時に気がついていた。あの時、翔の態度に一々振り回され、挙げ句の果てには抱いてもらえなかったことに俺は涙まで溢した。 「嫌だ……そんなこと言わないでよ」  思い出したくもなかった。あの時ほどΩである自分が惨めで情けない存在なのだと感じたことはない……なりたくもなかったΩの性、認めたくないその自身の性ですら翔に偽りだと否定された。 「そうだろ? 自分でも薄らとわかってるんじゃないのかな?」  伊吹は翔の持つ個のフェロモンは俺にしか作用しないのだと断言する。俺の瞼を塞いだまま、静かないつもの優しい声で囁いた。 「俺は理玖の泣き顔は見たくないよ……ごめんな、もう泣かないで。別に意地悪を言ってるわけじゃないんだ……」  違うんだ。初めて会った時、翔は俺を全否定したんだ。Ωですらない、偽物だと言った。俺が翔にとって特別な存在ならあんな冷たい態度なんかとるわけがない。今だって俺に対する興味は無くなり、実治と二人で過ごしているんだ。  伊吹の言わんとしていることはわかる。でもそんなの絶対に認めたくなかった。そんなの惨めすぎるだろ…… 「ねえ……俺と番になってよ」 「はは、そんな突飛な。ダメだよ、今の理玖はムキになってる……今日はこのまま寝なさいな」  伊吹は俺の申し出を笑って流すと一緒にベッドに入ってくる。俺も当たり前のように伊吹を迎え、その腕に抱かれるようにして目を瞑った。  

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