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 章太はおかゆをいつもの長机に置き、すぐに背を返して、続木黒也の長身を支えるため手を伸ばす。触れた体は、衣服越しでもはっきりとわかるほどに熱かった。 「ちょっ……と待ってくださいね、情けないんですけど……っ本気でもたれられるといっしょに潰れる未来しか見えないんで、出来れば自力で歩いてください……! というか、ゴールどこ……っ、続木さん、どこで寝てたんですか?」 「んん……ねてない……すわってた」 「座ってた? ああそっか、楽屋なんだしベッドなんてあるわけない……」  章太は改めて一室内を見回す。たっぷりと広さを持った大部屋の一角には、着替え用にカーペット敷きのスペースがあるものの、奥まった場所であるがゆえに見るからに寒そうだ。それよりも陽の当たる机を選んだ俳優の気持ちは、健康な身を持ってしてもよくわかる。 (つか、ろくに羽織るものもないな……)  俳優はどうにか元居た椅子へ戻ると、背もたれに残していたコートを肩に羽織った。現状、彼が包まれそうなものといえばそれだけだ。毛布どころか、膝掛け一枚すらもない。  この状況で、体調が悪化しないわけがなかった。  しかも、続木黒也はすでに私服姿なのだ。衣装のコックコートは、きちんとハンガーを使って、衣装掛けに戻されている。高熱での撮影後、一人ではどうしてもままならず、マネージャーの手を借りたのかもしれない。だとしても、プロ意識の高さはひしひしと感じ取れた。 「ん……なんか、いーにおい……」  椅子に座ったきり、眠りに落ちたかのように静かだった続木黒也が、ふにゃりと口を開く。章太は慌てて、食事の皿を彼の手前に寄せた。 「おかゆです。あの、食欲あるかわからないですけど、食べられるだけ食べてください」 「……んー……」 「できるだけ、頑張ってみてください……。この後マネージャーさんが薬を持って来てくれるそうなので、胃に何か入れないと」  しんどそうに目を閉じてしまう俳優の右手にスプーンを握らせて、どうにか、皿の半分は胃におさめてもらうことに成功する。そのぐらい食べてもらえれば、ひとまず安心だ。章太は皿を下げ、次に給湯スペースでお茶を淹れた。それから、薬を飲む時用の水。  俳優は体を小さく縮めるようにして、コートの中、なんとか暖を取っている。空調はもちろん効いているものの、本来ならベッドで眠っていて当然の状態だ。 (どっかから毛布でも借りて来て……や、その間に倒れられでもしたら、そっちのがやばいよな)  テレビ局の勝手など、章太にはよくわからない。どこで手に入るか皆目見当も付かない毛布を求めてうろうろするよりは、ここで俳優のようすを見守っていた方がまだ賢明だろう。

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