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「おい、誰か適当な菓子折でも用意してついてこい! 大人数で来るなよ、一人か二人で充分だからな!」
「金森さん、……それじゃあ、Pは謝罪に行くんですか」
「ああ」
足早にスタジオ内へ戻って来たディレクターの周りに、ばらばらとスタッフが集まり始める。番組プロデューサーの下した判断は、そこで伝えられた。
「あちらさんに許してもらえるまで頭を下げるつもりだよ、あの人は。当然、俺も同行する。さすがに二人じゃ誠意の数が足りねえだろ、だから……」
「俺! 俺行きますっ。行かせてください!」
「あー、上山が行くんなら手綱取る人間が要るだろうな……。俺も行きます」
「わかった。おまえら二人な」
「っ……」
あの、と喉元まで声がせり上がる。章太はぐっと指を握り締めた。……言わなきゃ。
(言わなきゃだめだ)
あの、オレも連れてってください。そう言って、自分の確認が足らなかったせいだと、ちゃんと謝罪して。
そうすべきだと頭ではわかっているのに、どうしても声が出せない。その間に、どんどん話は進んでゆく。
「金森さん確認ですけど、いまのお話でいくと、たぶん到底スケジュールどおりに撮影って出来なさそうですよね? もちろんウチらスタッフは待ちますけど、リスケなら続木さんに早めに連絡した方が……」
「っていうかディレクター、今日の続木さんはケツあるはずですよ」
「あっそうです、あります! 午後二時までで次の撮影に移動になります! 別日を押さえるならだいたい何日になりそうか出してもらえると、こちらも交渉しやすくて助かります!」
「あー」
ディレクターは乱暴に髪を掻き混ぜた。
「とりあえず、瀬野マネに撮影中止の旨を伝えろ。いつ撮れるかなんざこっちの謝罪がいつ受け入れられるかによるだろ……とりあえず今日はもう無理だ、でもまあ明日明後日だな。放送日はズラせねぇんだから、それ以上は遅らせられない」
「D! 明日明後日だとスタジオが取れませんー!」
「はあ?」
「今日の夕方からずっと、三日先まで某ドラマが埋めてますー。別のスタジオももちろんソッコーで探しますが、キッチンの形がおそらく変わるので、画の繋がりを保証できませんー」
「あ~」
ディレクターの唸り声が低くなる。そこで、彼の持つスマートフォンが着信を告げた。さっと通話を繋げたディレクターの話し口調からするに、相手はどうやら番組プロデューサーだ。
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