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淫猥④
空が何も言えずに固まっていると、帰山は再び話し続けた。
「僕は払いましたよ。島田という男の求める金額をね。金を払わせる為に、親に色々と理由をこじつけたり、執事に手伝わせたりしましたけどね。因みに、ここにいる人達はこのバスに乗る権利を抽選で当てたんです。物凄い倍率だったそうですよ?流石、空先輩ですね。でも僕は、島田という男から直接招待を受け、多額の金を支払ってここにいます。だから特別招待客なんです。彼らは僕に逆らう事は出来ない事になっているんですよ。ルールを破れば、ここの客ではいられなくなりますからね」
帰山は得意げに言い、周りの男達は悔しげな表情をあらわにした。
帰山は、ふいに空の頬に触れる。
「…ゃ…」
空はぴくりと身体を震わせるが、帰山の狂気に恐ろしさを感じ、振り払うことができなかった。
「僕は、空先輩を好きにできると言うのなら、お金なんて幾らでも払います。それくらい僕は空先輩が好きなんです。なのに、空先輩は、僕があんなに告白してもちっとも振り向いてくれない。あなたは、誰にも捕まえられない蝶のような存在です。でも、そんな空先輩が今僕の目の前にいる。空先輩を好きにできるんです。はは、夢のようですよぉ」
狂愛とでも言うのだろうか。
帰山の空に対する執着は、空を心の底から震え上がらせた。
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