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誘惑②
島田は空の小さな顎を掴み、クイッと上を向かせる。
「俺を誘惑するとは大した度胸だ。だが、悪い気はしない。いや、お前に誘惑されて悪い気がする奴なんていないさ」
いつもなら目をそらす空だが、この時は島田の事を真っ直ぐに見つめ返した。
「…レオに会わせてくれるなら…なんでもする…」
震える声で空はそう言った。
「はっ、なんでもするか!相当覚悟決めてきたみたいだな。いいのか?後悔してもしらねぇぞ?」
島田の脅かすような言葉に、空は一瞬顔を引きつらせたが、すぐにこう言い返した。
「…ここにいたら、黙っていたって望まない事をさせられるから…」
「ふ、はは。まぁそりゃそうだな。いいぜ。お前の覚悟に免じて、レオに会わせてやる。」
島田は、空の顎を離して言った。
「ほ、ほんと!?」
島田の言葉に空は思わず目を輝かせる。こんな作戦がうまくいくなんて思ってもいなかったのだ。
「あぁ。こっそり鍵を取ってきてやる。だが、お前とレオを会わせるなってオーナーから言われてるから、隠密行動をしてもらうぜ。見つかったら俺もやべぇからな。」
「隠密行動って…」
「なんだよ」
「…なんでもない…」
「いいか?今から鍵をこっそり取りに行ってここに戻ってくる。そしたら俺と一緒に来い。レオの部屋まで案内してやる。お前が部屋に入ったら、俺はドアの外で見張ってる。ただし、お前達が会えるのは10分だけだ。10分したら戻って来い。来なければ無理矢理連れ戻す。いいな?」
島田の言葉に空は小さく頷いた。
たとえ10分でもレオに会えるならいいと思った。
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