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接触③
「私たちは、裏社会の闇を葬る事を目的に活動している組織の一員だ」
スザクがゆっくりと話し始めた。
「あ…っ」
その一言で、空はレオから聞いた話を思い出した。
「どうやら、レオ君から話を聞いたみたいだね」
空の表情から、スザクも察したようだ。
「はい、レオから聞きました。ここを急襲する計画を立てているって…」
空は、声をひそめながら言った。
「そこまで知っているなら話が早いね。その通りだよ。少年達を誘拐、監禁しているこの館の悪事は知っていたが、セキュリティが固くて、なかなか内情を知ることができなかった。そんな時にレオ君と接触することが出来、中の様子や館内の作りをこっそり教えてくれていたんだ」
スザクも声のボリュームを落としながら話し始めた。
スザクの話を、空はドキドキしながらも静かに聞いていた。
「レオ君から空君の事を聞いてね。一度話をしておきたいと思ったんだ。今回、なんとか客の振りをして君と接触する事が出来た。空君、よく聞いてほしい。急な事だが、明日の夜、決行する」
「決行って…?」
「我々の組織が総動員でこの館を急襲し、数々の悪事を世に公開する」
スザクは小声ながらも力強く言い放った。
突然の事に、空は胸の鼓動が収まらなかった。
「じゃあ…、僕達ここから逃げ出す事ができるんですか?」
「あぁ、そうだよ!」
空の問いかけに答えたのは、スザクではなく、隣に座っていた少年、ユキトだった。
空はユキトの方を向いた。
「空君、俺達は絶対みんなの事を助ける。俺と同じくらいの年の子達が監禁されて、酷いことをされている事が俺は本当に許せない…!絶対…、絶対助けるから…!」
ユキトは両手を膝の上で震わせながら言った。
こみ上げる怒りをグッと堪えているようだった。
「ユキトくん…ありがとう…!」
空は、ユキトに礼を言った。
助かるんだ。
レオも僕も。
そう考えると、涙がこみ上げそうになった。
「空君、明日の19時に我々は仕掛ける。部屋にいて欲しい。必ず君たちをたすける」
スザクが優しく言った。
「はい…!本当に…ありがとうございます!」
空は頭を下げながら言った。
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